冬になると、スキー場のコース外や、スキー場の無い山でスキーやスノーボードをしていて、遭難したり、雪崩に巻き込まれたりというニュースが何件も入ってきます。2021年~2022年シーズンは近年にない雪の当たり年で、日本海側ではバカバカと雪が降り、バックカントリーを愛好する人にとっては最高のシーズンです。トライアスロンを真剣にやっていた5年ほどのブランクはあるものの、僕もスキー、スノーボード歴は40年以上になり、20年近いバックカントリースキー歴もあるので、山に行く人の気持ちはよく分かります。
ちょうど10年くらい前から、バックカントリーに入る人が急激に増えだしました。正直なところ、そのほとんどがバックカントリーを滑るには力量不足で、かつ準備不足であることが見てとれました。ずっと山で遊んでいると、ぱっと見でだいたいわかります。
「その小さいバックパックには何が入っているの?せめてビーコン、プローブ、ショベルはあるよね?」
「その程度の技術ならゲレンデで良いんじゃないの?」
「GPSに頼らずに地図は読めるの?つか、地図を持ってないよね?」
ガイドツアーに参加しているからと言っても、装備や力量は関係ありません。自分のことは自分でするのが、山での基本です。僕は当初、僕のガイドの師匠である橋本さんにお金を払って、実際に雪山で勉強しました。ガイドを依頼するのではなく、地図の読み方、雪崩の危険度チェック、自分の居場所がわからなくなったときの対処、雪崩に巻き込まれた人の救出、バックカントリーでの注意等を、当時、一緒に山に行っていた友達2人と学び、その後も3人で山に入るたびに雪洞を掘ってみたり、いろんな想定をして相談したりと、滑るより長い時間を費やしたかもしれません。そうして、ほとんど無駄な装備を揃えて、毎回、使うことのない重たい装備を背負って登りました。
もちろん、遭難した人の全てが力量、準備不足とはいいません。バックカントリーにおいて人間は無力なので、どんなに上手くても、準備をしても事故は避けられません。それでも、力量が不足し、準備ができていないと、事故の可能性は急上昇します。
自分が遭難したり、雪崩に巻き込まれて死ぬのは仕方ないと諦められるかもしれません。でも、一緒に入った友達が遭難し、雪崩に巻き込まれるのは嫌だし、雪崩に巻き込まれた人を見ているだけで、何もできないなんていうのも嫌です。せめて救出作業だけでもしたい。
バックカントリーは、入ったことのない人には絶対に理解できない魅力があります。そしてその魅力はすぐ隣にある絶対的な危険とセットです。危険から目を背けることなく、技術の向上と装備をしっかりして、天候に注意して無理しないことを守って遊ぶのがバックカントリーの鉄則です。