『鬼師(おにし)』という職業があります。僕なりに調べてみても、職業に『鬼』という言葉を使う職業は鬼師だけのようです。鬼師は僕たち屋根屋にとって、身近な存在。というよりも、鬼師あっての屋根屋かもしれません。屋根屋にとってはそれほど重要な存在である鬼師が作るのが『鬼瓦』です。鬼瓦を作るから鬼師。いつから、そう呼ばれているのかはわかりませんが、ずっと、そう呼ばれています。鬼師は職人にして芸術家。実際に彼らの仕事を見ると、それはとても美しい動きで、迫力ある鬼瓦を作ってゆきます。あるいは美しい動きからしか、鬼瓦は作られないのかもしれません。
屋根の上で、その家に住まう人を守るために風雨に耐える鬼瓦ですが、今では鬼の顔をした鬼瓦だけでなく、もっと簡素な鬼瓦ですら使わない家が多くなり、決して大袈裟な表現ではなくとも、鬼師たちは存亡の危機にさらされています。
今回の『鬼滅の刃×三河の鬼師』というコラボレーションは唯一無二。名前に鬼がつく職業なんて鬼師だけなんだから。日本にはこんなにも素晴らしく、美しい仕事があるということを知ってもらうきっかけになればと思います。
