一緒に仕事している大工さんが、外壁に使う杉板を焼くというので、見学に行ってきました。愛知県では見たことがありませんが、何やら西の地方ではけっこう使われていたらしいです。
杉板を焼いて炭化させることにより、劣化を遅らせることができて、60年以上、保つようになるらしいです。見た目もペンキを塗ってあるのと違い、本物の炭なので、深い黒が美しい建物になります。
まずは板の癖を見ながら、三角形に組みます。
脚立に立て掛けます。
下に焚き付けを突っ込んで、バーナーで火を点けます。
火は乾いた板の内側にあっという間に広がり、煙が出てきます。
板と板の隙間に鎌を入れて、隙間を広げてやると炎が上がります。
頃合いを見て脚立から降ろし、紐をほどいて消化!火を点けてから消化まで2分ほど。油断すると焼き過ぎてしまうので、目を離せません。
焼くのは表面の1ミリ~2ミリ程度。これで板としての強度は落とさず、長持ちさせる焼杉板の完成です。
むー。こんなん初めて見ました。先人の知恵です。面白い。
現代の日本の建築では、最近になって開発された、寿命が短く、環境にもインパクトを与える素材ばかりを使うようになっています。せっかくこんなに素晴らしい素材があるのにね。
住宅建築において歴史とか伝統とか、僕はけっこうどうでもいいと思っています。伝統的な仕事をしているのに?と思われるかもしれませんが、僕が瓦を推しているのは、瓦が素晴らしい物だからです。瓦以上に素晴らしい屋根材が出てきたら、瓦じゃなくても良いと考えています。お客さんにとって、最も良いものを推すのも、職人の役割の一つ。そこに歴史や伝統が入り込む隙間はありません。歴史ある、伝統的な物だから推すといのは間違いで、「お客さんにとって良い物を推す」という伝統こそ守られるべきだと考えています。その上で瓦を推すには、それだけの理由があるだけです。
焼杉も瓦も、この先無くなっていく物ですが、間違いなく素晴らしい素材です。