トライアスリート屋根屋、四代目屋根誠・竹内のブログ

旅好きな屋根屋でトライアスリートの竹内賀規が、トライアスロンのことやトレイルランニングのことを書くついでに、屋根のことや瓦のことを書きます。

瓦が溶けるような現象

トライアスリート屋根屋、常滑は屋根誠の瓦葺き師・竹内です。

 

不思議なもので、瓦は焼き物なのに、溶けることがあります。たぶん瓦だけでなく、焼き物すべてに起こる現象かもしれませんが、こんなふうに溶けます。

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右上の白い部分が溶けている箇所です。アップにしてみると、バサバサになっているのがわかります。

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正確に言うと、溶けているわけではありません。焼き物、陶器には目には見えない、微細な穴があり、わずかに吸水します。雨が降るとほんの少しだけ、雨水を吸うわけです。雨水と一緒に不純物、うちの辺りだと主に海から飛んできた海水の塩を、瓦が吸収します。吸収された塩は、水が乾燥したときには結晶化します。小さな小さな、目に見えない結晶です。数十年の間、溶けては結晶化し、溶けては結晶化しを繰り返すことで、小さな結晶はわずかずつ成長して、陶器の素材を壊してゆきます。それが溶けているように見えるということです。ひどい場合は雨漏りに繋がるので、交換が必要になります。

 

ただ、この現象は絶対に起きるわけではありません。むしろ起きないことのほうが多いです。しかも築50年程度ではほとんど見られず、70年、80年と経った建物の一部の建物でしか起こらない現象です。条件として『海沿い』『築70年以上』『瓦の焼成温度がわずかに低かった』という辺りが重なったときに、初めて起こると考えられます。

 

ただ、他の屋根材、例えば板金は海沿いでは、あっという間に錆びてしまうし、スレート系もすぐに脆くなります。瓦はこんなふうになることもあるけど、それでもめちゃくちゃ寿命が長いということです。