バスケットボールでは僕も観戦したAICHI CENTRAL CUPやプレシーズンマッチ、天皇杯が始まり、シーズン開幕を控えながらも盛り上がってきました。そんな開幕前に発表されたのがこの自叙伝。
著者はサミュエルサトシ。サブタイトルにある通り、バスケのMCをしているラッパー。分かりやすく言うと、一時代を築いたヒップホップユニット『HOME MADE 家族』のMC KURO。僕がBリーグを本格的に見始めた最初のシーズン、名古屋ダイヤモンドドルフィンズの応援をし始めたシーズンに、KUROくんはドルフィンズアリーナでMCを担当していて、この自叙伝は、そこにたどり着くまでの物語です。
司会のMCとラップのMCの違い。
MCとはマスター・オブ・セレモニーの略で、いわゆる司会。ラップのMCもアリーナのMCも一括りにMCと表現されるけど、役割は違います。1980年代のヒップホップのMCは司会に近いイメージもあったけど、現在のヒップホップのMCはラップ。アリーナ、バスケのMCとはまったく違います。物語はドルフィンズ関係者の結婚式の司会(MC)を、たまたま引き受けたところから始まり、ドルフィンズアリーナでMCをやってみないかと打診され、戸惑いながらも引き受け、進んでいきます。
MC KUROのMCはすでにドルフィンズアリーナの名物。
2023-2024シーズンに最初にドルフィンズアリーナに行ったときに、「あのMC KUROが喋ってる!」と驚きました。そのときの僕はKUROくんのMCの上手さ、会場の盛り上げ方に、さすがは「家族のKURO!」と感心すると同時に、KUROにMCを依頼するなんてドルフィンズってすげー!とも感心しました。相手チームや相手チームのファンにも敬意を示すMC KUROのMCは、スポーツを楽しむMCとして最高でした。KUROくんはさらにシーズンも終盤にさしかかったときに、オープニングの演出をガラリと変え、これがピタリとはまり、さらにかっこよくなり、アリーナの一体感は素晴らしいものになりました。さすがは武道館を埋めたミュージシャン。
戸惑いながら進む姿。
ところが、この自叙伝を読むと、最初はまったく上手くいかず、迷いに迷い、少しずつ進んでいったのがわかります。ドルフィンズアリーナでともに半年以上を過ごしたときには、そんなこと微塵も感じさせなかったのに。こんな一文があります。
「新しいことを始めるときは必ず痛みが伴う。手弁当になっても別に構わないと思っていた。一番ダメなのは、やれることがあるのに、できない理由を並べてやらないこと。物理的に不可能なことでない限り、やっちゃえばいい。結果良いものになれば、マネタイズなんて後からでもできる。第一、お金よりも大切なのはワクワクすることだ。」
僕が普段から思っていることを、そのまま書いてくれていました。そう、できない理由なんて関係ない。やれることがあるならやるだけ。いつか直接、話す機会があったら、なんだか話しが合いそうな気がする人です。