トライアスリート屋根屋、四代目屋根誠・竹内のブログ

旅好きな屋根屋でトライアスリートの竹内賀規が、トライアスロンのことやトレイルランニングのことを書くついでに、屋根のことや瓦のことを書きます。

鉄分の量 × 土質 × 焼成 × 窯 ~石州瓦の“色と強さ”は、なぜあれほど個性的なのか~

トライアスリート屋根屋、常滑は屋根誠の瓦葺き師・竹内です。

 

島根を旅すると、まず目に飛び込んでくるのが石州瓦の屋根です。町の風景のイメージは『屋根』と『壁』でつくられていて、どこか懐かしさを感じる町並みには、その土地独特の屋根が関わっています。島根の赤みがかった瓦、黒っぽく締まった瓦、銀色に光る瓦。同じ町並みの中でも、一枚一枚の表情が微妙に違います。

工業製品のように「きれいに揃った屋根」ではなく、どこか自然で、どこか生き物のような屋根。

その個性の正体は、実はとてもシンプルな4つの要素で説明できます。

  • 鉄分の量

  • 土質の違い

  • 焼成条件

  • 窯の個性

この掛け算こそが、石州瓦という素材の本質です。

 


① 鉄分の量 ―― 石州瓦の“出発点”

石州瓦の大きな特徴は、原料土に鉄分が多く含まれていることです。

製鉄が盛んであることでも解るように、石見地方の土は、中国山地由来の地質の影響で、もともと酸化鉄を多く含んでいます。
これが、石州瓦特有の赤褐色や深い色合いの“出発点”になります。

ただし大事なのは、

「鉄分が多い=色が同じになる」
ではないということです。

同じ石見地方の土でも、

  • 鉄分の含有量

  • 鉄の粒子の細かさ

  • 他の鉱物との混ざり具合

が場所ごとに微妙に違います。

この段階ですでに、瓦の色の幅は自然に生まれ始めているのです。


② 土質の違い ―― 自然素材ゆえの個性

石州瓦は、基本的に“地の土”を活かした瓦です。
同じ地域でも採れる土は決して均一ではありません。

  • 粘土質が強い土

  • 砂分が多い土

  • きめの細かい土

  • 粗い粒子を含む土

これらの違いが、

  • 成形のしやすさ

  • 焼いたときの収縮

  • 表面の質感

  • 最終的な発色

に大きく影響します。

工場で完全に均質化された材料ではなく、土地の個性がそのまま残った土を使う

ここが石州瓦の面白さであり、難しさでもあります。


焼成条件 ―― 火がつくる最後の表情

石州瓦は基本的に“焼き締め瓦”です。
釉薬で色をつけるのではなく、高温でしっかり焼き上げることで強度と色を出す瓦です。

この焼成条件が、色を決定づける最大の要素になります。

  • どれくらいの温度で

  • どれくらいの時間

  • どんな火加減で

  • どんな雰囲気(酸化・還元)で焼くか

同じ土でも、焼き方ひとつで

  • 赤みが強くなったり

  • 黒っぽく締まったり

  • 銀色がかったり

まったく違う顔になります。

つまり石州瓦の色は、

「塗った色」ではなく
“火の中で生まれた色”

なのです。


④ 窯の個性 ―― 均一にならない美しさ

さらに石州瓦には、窯ごとの個性という要素が加わります。

大きな窯の中では、

  • 手前と奥

  • 上段と下段

  • 火口に近い場所と遠い場所

で温度や雰囲気が微妙に違います。

そのため、

同じ窯で同時に焼いても、色が完全には揃わない

という現象が起こります。

工業製品として見れば“ばらつき”ですが、石州瓦にとってはそれがそのまま魅力と味わいになります。


4つの要素が重なって生まれる石州瓦

整理すると、石州瓦の色と個性は

  • 鉄分の量(素材の個性)
    ×

  • 土質の違い(土地の個性)
    ×

  • 焼成条件(職人の技)
    ×

  • 窯の個性(環境の揺らぎ)

この掛け算で決まります。

だから石州瓦は、

  • 完全には揃わず

  • でもバラバラでもなく

  • 自然なグラデーションを持つ

独特の屋根景観をつくり出します。


なぜ石州瓦は強いのか

この“色の個性”は、そのまま強さにもつながっています。

高温でしっかり焼き締めるため、

  • 吸水率が低い

  • 凍害に強い

  • 経年変化に耐える

という、実用面での大きなメリットがあります。

石州瓦が雪国や風の強い地域でも評価されてきたのは、
この焼き締め文化の積み重ねがあるからです。


まとめ:石州瓦は「火と土の掛け算」

石州瓦の特徴をひと言で表すなら、

土地 × 火 × 職人 × 窯 が生んだ瓦

です。

  • 鉄分の多い土という土台

  • 多様な土質

  • 高温焼成という思想

  • 窯ごとに違う表情

これらが重なって、あの豊かな色合いと強さが生まれています。

だから石州瓦の屋根は、工業製品ではなく、どこか“作品”のように見えるのだと思います。

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