パリ・オリンピックで話題になった、クライミングの身長問題について書いてみます。
リードでの活躍によってボルダーの第1課題の問題が強くなった。
女子スポーツクライミングのボルダーでは、日本代表の森秋彩さんが第1課題で、最初のホールドに取りつくことができず、0点に終わりました。その後のリードでは出場選手中で最も高いところまで登り、最後のホールドに触った、ただ一人の選手となったことで、それほど有力な選手が取りつくことすらできなかったボルダー第1課題のセッティングが、より問題になったのかと思います。大方の意見が「身長の低い森に対するイジメ」「森に勝たせたくないから」と言った意見だったように見受けられます。
身長が低い=不利ではない。
クライミングというのは体が小さいから不利というスポーツではありません。もちろん、身長が高いと届くホールドが増えるということはあるし、その部分では高身長な人が圧倒的に有利です。ですが、高身長なら高身長で、ホールド間を狭く感じ、上手くバランスを取れなくなることもあります。だいたい森秋彩さんが小さいと言っても154cmあり、2番目に小さい選手は157cmで、金メダルを獲得したヤンヤ・ガンブレットさんは164cmなので、それほど大きな差があるわけではありません。第1課題の森さんに関しては、ルートセッターも予想外だったんじゃないかと思います。
リードでは森秋彩さんが圧倒。
リードを見てみると、競技前に解説者の平山ユージさん(クライミング界のスーパーレジェンド)がセッターと話したところ、「かなり難しい。完登できるとすれば森さんかヤンヤさんだけ」と言っていたとのことで、もし本当に森さんを落としたいのであれば、リードだってホールド間を広くしてしまえば良かったはずだし、セッターの言う通りに、森さんだけが最後のホールドに触ることができたという事実が、セッターの公平性を物語っていると思います。
『高身長=重い』重いのは不利。
もう一つ、とても重要なことは『高身長=重い』ということ。重い物を持ち上げるのが大変なのは誰でも分かることですよね。おそらく森さんの体重は35キロとかでしょう。一方でヤンヤさんはあの筋肉質な身体を見る限り、50キロくらいはあると思います。15キロも差があれば、長時間に渡って競技することになるリードでは森さんが圧倒的に有利になります。もしかして身長180cmで体重が70キロの僕が出場していたら、森さんの倍の重さになるわけです。クライミングの身長は特別に有利不利に影響はしないことが分かると思います。
体重が重いと離陸できないこともある。
数年前に外の岩に登りに行ったときのことです。スタートする場所が完全にひっくり返っている場所で、ホールドをつかむことはできても、体が重すぎて足が固定できず、離陸できずに終わったことがありますが、おそらく森さんくらいだと簡単に離陸して登ってしまうと思います。クライミングはそれぞれの身体的特徴を活かすスポーツなんです。
ボルダーとリードも分けて順位を付ける。
東京オリンピックから採用されたスポーツクライミングの問題点としては、身長別みたいなバカらしいことではなく、種目別になっていないことだと思います。パリではスピードだけ別になりましたが、ボルダーとリードも別にするべきでしょう。そして、三種目で金メダルを決め、総合でも決めるということにすれば、不公平感の無い競技になると思います。
クライミングはめちゃくちゃ面白いスポーツです。登る前にホールドを見て、どうしたら登れるかをイメージするのがとても大切です。やってみるとびっくりするくらい面白いので、近くにクライミングジムがある人はぜひ体験してもらえたらと思います。