八月八日は漢数字の八の形から、屋根の日に制定されています。なので、瓦葺き師の僕は屋根について書きます。
日本では古来、草を屋根材として使う茅葺や、樹の皮や薄く削いだ樹木を使う杮葺が用いられてきました。瓦は約1400年ほど前に日本に伝来しましたが、一般的に使われるようになったのは江戸時代になってからです。江戸のまちというのは火事が起こると、一気に火が回り、大火事になることが多かったことから、延焼を防ぐために、不燃材である瓦が推奨されました。現在においても瓦は不燃材として認められています。
つい最近のことです。築50年ほどの家の屋根裏に入りました。瓦の下には葺き土と杉皮が敷かれ、その下には野地板とよばれる板が敷かれています。この日も最高気温は35度を超える予報が出ていましたが、屋根裏は意外なほど暑くありませんでした。もちろん暑いし、汗も出てきますが、板金屋根や化粧スレート(カラーベスト)の屋根の暑さとは雲泥の差です。10度以上は違うんじゃないかと思います。この家の屋根裏には断熱材なんて一切ありませんでしたが、窓を開けておけば昼間でもエアコンが要らないようでした。家は夏を基準に建てる、ということが実践されれば、快適に暮らせるということなんでしょう。お孫さんが庭で蝉を捕まえてきました。
瓦の屋根は美しいです。毎日毎日、屋根を見上げ、上っていますが、綺麗に葺かれた瓦はやっぱり美しいと思います。すべての屋根材の中で、ただ一つ、表情が豊かで、何十年、何百年、千年を得ても、その時々の美しさを見せるのは瓦だけです。
八月八日だけは屋根を見上げてみてください。美しく、見上げる意味、意義のある屋根か否かも見てください。家は人が、家族が住み、それぞれの物語を作っていくためのものです。屋根は家で最も大切なものです。