トライアスリート屋根屋、四代目屋根誠・竹内のブログ

旅好きな屋根屋でトライアスリートの竹内賀規が、トライアスロンのことやトレイルランニングのことを書くついでに、屋根のことや瓦のことを書きます。

瀬尾まいこ著『あと少し、もう少し』駅伝の何が面白いか理解できない人にこそ読んでもらいたい。

トライアスリート屋根屋、常滑は屋根誠の瓦葺き師・竹内です。

 

久しぶりに本について。平成24年の作品なので今さら感がありますが『あと少し、もう少し』(瀬尾まいこ著)です。

あと少し、もう少し(新潮文庫)

あと少し、もう少し(新潮文庫)

 

 

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田舎の中学校、市野中学校の陸上部が、県大会出場をかけて駅伝大会に挑みます。背表紙には『陸上部の名物顧問が異動となり、代わりにやってきたのは頼りない美術教師。部長の桝井は、中学最後の駅伝大会に向けてメンバーを募り練習をはじめるが…。元いじめられっ子の設楽、不良の大田、頼みを断れないジロー、プライドの高い渡部、後輩の俊介。寄せ集めの6人は県大会出場を目指して、襷をつなぐ。あと少し、もう少し、みんなと走りたい。涙が止まらない、傑作青春小説。』とあります。

 

地区大会への出場すら危ぶまれる陸上部で、部長の桝井が見込んで声をかけた寄せ集め集団。元いじめられっ子の設楽から不良の大田へのリレーは意外と早く訪れますが、その時点で涙腺崩壊。ガソリンスタンドでオイル交換してもらっているときに読んでいた僕は、涙をマスクの下に流し込むことで事なきを得ました(笑)

 

一人ひとりが抱える背景や思いを読んでいると、まるで自分が中学生の頃に戻ったかのよう。それぞれのキャラクターと全く同じではないものの、誰しも少しずつは彼らのような感覚を持っていたんじゃないかと思います。設楽、大田、ジロー、渡部、俊介、桝井、あるいは先生たち。それぞれの目線から描かれる感覚には、共感を覚えざるを得ません。

 

あとがきは『風が吹いている』の三浦しをんさん。三浦さんは「青春小説の傑作」などと、よくある表現は使いたくない。しかし、たしかに傑作と言うほかない作品だ。」と書いています。この襷がゴールラインを超えるときには読み終わってしまう。まだ読み終わりたくない。あと少し、もう少し。

 

陸上が好きな人、駅伝が好きな人はもちろん、むしろ駅伝の何が面白いかわからないという人にこそ読んでもらいたいし、本当のところ、陸上や駅伝なんて、ただの題材でしかないのかも知れません。圧倒的な傑作です。