先日、隣の自治体に住む人から、屋根を見てほしいという電話がありました。うちの前には高浜に本社がある屋根工事業者の支店に依頼していたそうですが、そこがいつの間にか店を閉めてしまっていたので、タウンページを見て電話してくれたとのことでした。
その業者は支店を出してから、10年程度で店を閉めてしまったようで、お客さんが「安くやってくれて助かってたのに、なんで閉めちゃったんだろうねぇ」と言うので、回りくどい言い方が苦手な僕は「安くやっていたからじゃないですかねぇ?職人仕事ですけど、商売ですから、ある程度の利益が出なかったら続けられないですよ」と答えました。
これ、うちの業界が抱えるとてつもない問題なんです。バブル崩壊後、屋根工事業界の価格破壊はひどいものでした。全ての業種と比較しても、飛びぬけて凄まじい値下げ競争が繰り広げられ、みんなどんどんと体力を奪われていき、その最中に震災が起こり、『軽い屋根のほうが地震に強い』という誤った知識が広まり、多くの瓦工事業者が倒産しました。
うちは僕が意地で、単なる意地で値引きしなかったため、なんとか今まで続けてくることが出来ていますが、それでも何年も赤字が続いています。本当に。だから、うちだってこの先、何年、続けられるかはわかりません。ノンキにトライアスロンなんてやって、儲かってるんだなーなんて思っている人は大間違いです。僕の自転車は火の車ですよw
うちだけじゃなく、近所の屋根工事屋が仮に商売をやめたとして、僕は違う仕事をして食っていくわけですが、意外と困るのはそこに住んでいる人だったりします。実際に常滑市内で会社として屋根工事をやっているのはうちだけ。知多半島全体でも数社。職人としてやっている人も激減しています。戸建て住宅と集合住宅の違いはあれど、誰しも家に住んでいることには変わりなくて、家はかたちあるものである以上は、修理する必要が出てきます。修理するときに依頼する業者がいなくなって困るのは、その町に住む人たちなんです。
正直なところ、僕にも適正価格というのはわかりません。それでも続けられないような価格で仕事を得ていたところの価格が間違っていたというのはわかります。そろそろ業界自体が目を覚ますころだと思うんです。